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Last Update 20010312

アクティヴ・サーボ・テクノロジー

 近所の電気屋さんで,ウィンドウショッピングするつもりが,思わず衝動買いしてしまいました.それは,PC用のサブウーファーです.かわたは,一応それなりのオーディオセットで音楽を聞いていることもあって,あんまりPC用のスピーカーにはお金をかけていません.PCのサウンドカードからの出力信号は自作のアンプ(ICを使ったものだけど,一応,配線とカップリング・コンデンサとかには気を使っている)に入力されていて,スピーカもこれまた,自作のもの(このスピーカは,かわたが学生のときの研究で活躍したものです....2つのうちの1つは,実験中に過大入力を加えてしまい,ボイスコイルをおかしくしちゃったので,ユニット交換したっていう思い出があります)です.

 以前から,このスピーカユニットでは,低域の再生に問題があるとは思っていたんですが,あんまりPCで音楽をかけることのなかったかわたは特に気に留めることもなく,ほっておいたのでした....
 でも,電気屋さんで,ちょこっと見たヤマハのサブウーファー

YST-MSW8

を見て,ちょっとほしくなったんです.ヤマハのサブウーファーには,AST(今ではYSTって言っていますが...ASTはアクティブ・サーボ・テクノロジーの略で,これは低音を小型スピーカで再生する技術です)が搭載されています.この,ASTにはかわたが少年だったころの思い出があるのです.

 かわたの記憶では,ヤマハがこのASTを発表したのは,かわたが中学生だったころです.その当時のかわたには,それがどんな動作原理なのかなんて知る由もないことでした.ただ,オーディオ&電子回路好きだったかわたは,よく電気店に行って,オーディオをいじっては試聴していたこともあり,ヤマハのASTだけは低音の質が違うと思っていました.当時のミニコンポは,どう言うわけだか重低音再生がコンセプトみたいになっていて,各社いかに小型スピーカで低音を再生するかにかけていました.ほとんどは,お決まりのヘルムホルツ共鳴器を使って,あとは,アンプからパワーをぶちこんで再生するという方式でした.その中で,なんだかASTだけは,素人的にもなんだか違う音がすると思ったのです.

 高専に入ったころ読んだ雑誌で,ASTは,スピーカのインピーダンスの上昇にあわせて,アンプの出力抵抗を下げるような方式でスピーカをドライブしている...というような記事を読んだ記憶があります.これは,結構,面白い技術です.
 普通のアンプは基本的に,電圧駆動型のアンプになっています.つまり,アンプの負荷がどうであろうと,アンプの出力電圧は一定に保つといったドライブ方法です.一方,スピーカは低域に共振点をもつため,低域でインピーダンスが上昇します.その結果,インピーダンスの上昇に伴い電力が低下(P=E2/Rより)し,出力音圧レベルが低下することになります.

 ここで,定電流駆動型のアンプに変更したなら,低域においても十分に電力をスピーカに供給できるので,低音を再生することができます(P=I2*Rより).しかしながら,定電流駆動ではスピーカに十分な制動をかけることができないため,なんだか間延びしたような低音が出ることになります.(真空管アンプなんかは結構ダンピングファクタの低いものが多いので,真空管アンプに近い音を出したいときは,定電流駆動型のアンプを使うといいでしょうね)

 ところが,ASTは,あくまで,電圧駆動型であるにもかかわらず,アンプの出力インピーダンスを変化させることで,低音を再生しようと試みたものです.つまり,いわばスピーカのインピーダンスが上昇したなら,それにあわせた負性抵抗でスピーカをドライブしようっていうものです.これは,アンプに正帰還を掛けることに他ならず,発振する恐れがあります.そこをうまく制御したのが,ASTです.

 そのことを知ったとき,かわたはすげえ...って思ったもんです.でも,やっぱりHi-Fiオーディオを追求する人にとっては,この技術はキワモノだったんでしょう...Hi-Fiオーディオの世界では,あんまり使われることなく消え去って行っています...まあ,このASTで再生された低音は,ダンピング(制動)のきいた低音なんで,妙に歯切れのいい低音に違和感があるって人には受け入れられないものなんでしょう...
 私の父もそうなんですが,やっぱりHi-Fiを愛する人は,低音は大口径のウーファーで,アンプに負担をかけることなく再生するのが一番と思っているようです.小口径のスピーカで,コーン紙の重量をかせいで,あとはアンプの出力で強引に再生するとか,アンプとスピーカで小細工して再生する(AST)ってのはやっぱりだめみたいです...

 でも,かわたが,中学時代に思ったASTの低音は,そんなに変な印象は受けない,比較的良質な低音であったと記憶しています.その後,このASTに出会うことは会っても,それはPC用のスピーカとか,ゲームセンターのアーケードマシンに搭載された音響装置を通してでした.

 前振りが長くなってしまいましたが,そんなわけで,このPC用のヤマハのサブウーファーが気になったのです.家に持ち帰って,PCにつないで,CDを再生した印象は,

「悪くない」

の一言に尽きます.いままでは,低音不足でなんか物足りなかったPCからの音に厚みが出ました.まあ,でもこの低音は,クラシックとかを聞くときにはちょっといただけないのかな?とも思いました.でも,最近流行の曲をかけるぶんには,ぜんぜん問題ありません.それより,お勧めしたいくらいです.

 なんだか,PCから出る音がそれなりになったんで,CDの音をMP3に落として,ジュークボックスでも作りたくなってきました...寝る前とか,土日に音楽を流すには問題ないクォリティの音です.
 案外,枕元にラジカセを置いて,音楽を聴いている人なんかは,ポータブルCDプレイヤーとAST搭載のPC用スピーカーを組み合わせて聞いたほうが,案外クォリティのいい音が楽しめるかもしれません....
...かわたのつぶやき


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