Sorry,Japanese only
Last Update 20020730

潜入!マルチまがい商法(^^;

 しばらく,エッセイのネタがないなぁと思っていたんですが,今月のはじめから,3週連続して,とある場所に潜入してきました.インターネット上でも「マルチまがい商法」と目されている某サロンです.

 ちなみに,かわたのところにお誘い(電話勧誘)がきたことのある悪徳商法では「T&C」という会社(レジャー関係の会員証とかを売っている)があります.この会社の無茶苦茶さ加減はTVニュースの特集でも取り上げられたことがあるくらい有名です.こんな危険極まりないところに乗りこむ気は起きないので,ここについては未潜入です.ちなみに,このT&C,かわたはまったく興味がないので「ご用件はなんですか?」と一言言ったのち(よくわからんことを言いつづけようがどうしようが),いつもそのまま電話を切っていたんですが,非常にシツこかったです.そこで,ある日,しばらく興味ありそうな感じで勧誘者の話を聞いてあげました.そして最後に,「遊ぶのは好きだけど,そんなところの会員になってまで人とつるみたくない! まったく興味がわかない!」と最後の最後に言ってやったら.それっきり電話は掛かってこなくなりました.やっとかわたの名前を勧誘名簿から消してくれたのか・・・って感じです.勧誘者当人も時間の無駄だったでしょう.

 さて,本題の潜入報告です.


7月某日
 新宿のショットバーでちょっと知り合いになった人から,今度会わないか?というお誘い.「一緒に飲もう」ってことかな? と思い,快諾した.でも,「面白いところを教えてやるよ」と言っていたのが妙に印象的(怪しい感じ)だった.まぁ,新宿ってところは,堅気の一技術者では一生お目に掛かれない世界で仕事をしている人もいるところだし,そんなに深くは考えなかった.


7月○日(土)
 新宿アルタ前で待ち合わせて彼と会う.彼は,飲み屋の空気が好きではないといい,コンビニでビールを買って,適当に路上で飲むことになった.ヘンな話だ.最初は無難な世間話から始まって,そのうち彼女とかいるの?とかいう話になる.「いないよ」と言ったら,案の上,「なんでぇ?」となる.
 この街は,男女の下半身の思惑で成り立っているような街だ.息苦しくなるくらい男女の下心が渦巻いている.そんな中で,かわたのような女の下半身(といっても,Hはしない.キスは好きだな...笑)には興味があっても,女性自体にまったく興味を示さない屈折した人間は,ある意味おかしな存在なのかも知れない.知り合いのバーテンは,「おまえみたいなのがいるから,おさわりパブが成立するんだ」と一時期笑っていた.

 このことについては,あるとき,ショットバーの常連客ともめたこともある.常連客の彼&彼女がやたらと「彼女をつくれ」だの「結婚しろ」だの言うからだ.まぁ,「結婚しろ」は,彼女をつくれってのが極端になってしまったことなので,彼自身,それを強く言おうとした気はないと思う.かわたのような,人の愛し方がわからない欠陥人間が彼女を持つと,いかに人を不幸にするかはよく把握しているので,かわたにはそんな気はさらさらない.結婚して子供を作るなんてもってのほかだ.子供は好きだけれど,愛し方がわからない.そんな人間に育てられた子供がどんな精神構造になり,屈折した人生を送っていくかはかわた自身よくわかっている.だから,どんなに好きな人ができたとしても,かわたは彼女を作ってはいけないと思う.その分,かわたは仲間を大事にしたい.仲間って言うのは,もちろん男女を問わない.男も女も同じだと思うからだ.
 口論になっていたとき,常連の女性客から,「そんなこと言うけど,それじゃ男と女はどう同じなの?」と聞かれた.かわたは,「自分で考えて自分で行動する奴,人の言いなりになる奴,人間は,そんな違いがあるだけで,男も女も変わらない」と答えた.言葉足らずだったから,これでかわたの言いたいことが伝わるなんて思わなかった.けれど,これはかわたなりの男女同権思想の一部だ.今は,夫の言うこと,男性社員の言うことを「はい」と素直に聞いていればいい時代とは違う.自分で考えて意見を言えるなら,男でも女でも,チャンスが与えられてしかるべきだと思う.

 話が,大きく横道にそれてしまった.しかし,みなさんには,かわたがいかに堅物でヘンな人間かは伝わったように思う.このような女性観,人間観を持っている人間に対して,女で「釣る」というのがいかに滑稽かということの顛末がこの後展開されるわけだ.

 ショットバーで知り合った彼は,突然,自分との知りあいには女性がたくさんいるというようなことを言ってきた.そして,やっぱり女の子もきれいでいてほしいけど,男もきれいでいたいよね? というようなことを言ってきた.どうも,彼女も作らず,男女交際をやたらまじめに語るかわたのような人間を,人は「純粋」もしくは「うぶ」だと思うようだ.それはどうかと思う.女と付き合わないのは,人それぞれの問題があると思うからだ.

 そして,とある招待カードを受け取ることになったのだ.そのカードには「扶洋薬品」と書かれていた.話の逸れ方からして,怪しい雰囲気は抜群だった.すぐにマルチまがい商法だろうな?と思ったが,その場では,誘いに乗ったように演じた.「行ってみてもいいよ」とかわたが答えたときの彼の微妙な表情の変化をかわたは見逃さなかった.

 一応,気になったので,自宅に帰り,サーチエンジンで調べてみる.案の定,「マルチまがい商法」らしいことだけはわかった.どうも,宗教がらみであるようなことが書かれているところもあったが,こればかりは確かめようがない.


7月△日(土)
 渋谷駅のハチ公前で待ち合わせて,そのまま銀座線に乗り,外苑前まで行く.そこに青山のサロンがあるという.
 ビルの最上階にサロンがあった.そこで担当者の女性と,紹介者の彼と,かわたの3人で話をする.ほとんどお友達モードの会話だ.大体の傾向として,マルチまがい商法のような勧誘では,「お友達モード」で接することが多いように思う.人間心理をある意味ついていると言える.洋服などを選んでいるときのショップ店員の対応でも同じことが言えるだろう.ビジネス的な口調よりも,親近感がある話し方のほうが,その人の精神的防御は一般的に甘くなる.そして,さらに親近感を持たせるために,そこでも何でもない世間話が繰り広げられるのだった.

 しばらくして,実際に試してみることになった.そこで試されるのは,美顔器だ.かわたにはもっとも必要のないものだろう.かわたの性格,趣味・嗜好をご存知の方なら,この時点で爆笑モノである.

 普通に洗顔して,その美顔器で顔の手入れをして,どのくらい汚れが取れるか?とか,テスラー管なるものから,高周波が出ていて,これで肌に刺激を与えて新陳代謝を活性化させるとか言っていた.大人になると,古い角質層が自然代謝しなくなるので強制的に代謝させるのだそうだ.わっはっは.高専時代に「電子工学科」,大学時代には「生物工学」,研究室は「医用生体工学」系で学んでいたかわたにこのような機械の説明をするほど滑稽なことはない.まちがってほしくないのは,かわたが,電子工学から,生物まで幅広く,高度で正確な知識を持っているということではないということだ.重要なのは,クロス学歴的な勉強をしたおかげで,そのテクノロジーは本物か? 評価方法は適当か? 本質は何か? というようなことが,異分野のものであっても,なんとなく判断できるようになっているということだ(というか,大学院というところは,そういう教育がなされるところですよね?).

 一目見て,あぁ,なんてうそ臭い機械なんだろうと思った.そして,体験が終わってから,価格を聞いてびっくり.40万円するらしい.あり得ない.部品点数,機能から考えると,少量生産であっても2〜3万円くらいで作れるはずだ.したがって,まあ卸売りするなら5万円くらいでは売れるはずであり,高くても10万円しないと思う.大体,ビデオデッキが1万円しない時代である.ディスプレイ・パネルや,スチーム発生器がそんなに高いとは思えない.ガラス管,その他制御系だって,民生品を使っているだろうから,そんなにしないはずだ.それとも計測器なみに高精度な部品を使っていると言うのだろうか? そうであれば,設計者の感覚を疑わざるを得ない.なぜなら,これはホームヘルスケア商品だと思うからである.


7月□日(土)
 2回目の体験日,この日は,旧式の美顔器を試してみるのと共に,わけのわからん売りこみ攻勢をかけられた.
 しかし,旧式の美顔器のおかげで,テスラー管が何者かわかった.これは,ガラス管の内部でテスラー放電をさせているだけの代物だ.テスラと聞くと,一部の人は「オカルト」を想像してしまうものらしい(その昔,『ムー』とかで取り上げられていることが多かったらしい)が,電気系の人は「電磁気学」でなじみの深い,磁束密度の[T]テスラだ.彼の発明品の中にはテスラ・コイルという昇圧コイルがある.このコイルで昇圧した高周波電力をガス(何のガスかは知りません・・・失礼)を封入したガラス管に加えることで,独特の放電が起こるというものだ.いわば,今の蛍光灯の原型のような代物である.このテスラ放電については,「新戸雅章:発明超人ニコラ・テスラ,ちくま文庫」に記載されているので,興味のある方は当たってみてほしい(かわたの同僚であれば,社内便で送りますので言ってください).
 高周波エネルギーを人体に加えることについては,昔の電磁波応用としての医療器具として「ジアテルミー」というものがあったのを知っているが,今はあまり使われているというような話は聞かない.そもそも,携帯電話の電波にしても,電磁波が人体に与える直接的な作用は「温熱効果」であり,「非温熱効果」については,一般的に否定されている.学生時代に若干調べたこともあるのだが,確か,アメリカの国家プロジェクトとして行われた「RAPIDプロジェクト」でこの手の電磁波の生体影響についてのレポートが数多く出ている.
 装置のテスラー放電を見ている限り,それほど高い周波数の電磁波を含んでいるとは思えない.これなら,1200MHz帯のアマチュア無線機(ハンディ機)のアンテナを肌の上ですべすべさせているほうが,よっぽど温熱効果が得られそうである.ただし,白内障になっても知らないけど...

 眼球の中の水晶体は,クリスタリン・たんぱくと言われる代物でできていて,当然の事ながら,たんぱく質だから熱が加われば変質する.つまり「ゆでたまご」状態になるわけだ.だから一時期,携帯電話の電波の人体への影響が取り沙汰されてきたわけなんだけどね.
 とある「扶洋薬品」のこの機械についてコメントしている掲示板で,「高周波放電をしているものは,オゾンを発生させているので,それが肌につけば,肌の表面が酸化して角質が取れる...体にいいわけがない!」というような説明を読んだが,電気屋さんの立場から言えば,空気中で高圧放電させているわけではないので,オゾンは発生しないと思う.雷でオゾンが発生するのは良く知られているし,大学とかの高電圧実験で,空気中で高圧放電させれば,空気中の酸素が電離してオゾンが発生することはある.現に,オゾン臭もするらしい(が,かわたは強電系ではなく,実験をしたこともない),テスラー放電でオゾンが発生するとはにわかに信じがたい.もし,詳しい方がいらっしゃれば,ご教示いただきたいと思う.

 しかし,この機械から発生させているスチームは要注意だ.担当者の説明では高周波か何かで電離させてオゾンを発生させているらしい.確かに,肌に当たるまでスチームの状態を維持しているということから,なんらかの処理を加えていると想像できる.オゾンなら,肌に当たった時点で細胞の電子と結合し水に戻るからあり得る話だ.担当者の彼女は,普通にオゾンを発生させていると言ったが,化学屋さん的な視点に立てば,オゾンは体に良いとは言えない.大体,世間でも活性酸素の発ガン性が取り沙汰されていたではないか.オゾンは活性酸素の一種である.ますますもって,よくわからない機械だと思った.
 が,体験後に,「この機械が何%くらいの感覚で必要だと思う?」と聞かれた.ここで0%と言ってしまうと,合計3度の潜入レポートが失敗に終わる可能性があるので,「うーん,70%くらいかな」と言っておいた.

 「純粋」そうだから,ひっかかるかもしれないと思って,かわたにこのような商法話をふっかける人(実は,かわたの中学時代の友人...ともはや言えるかどうかは怪しい...もネットワーク・ビジネス−マルチまがい商法の別の言い方−にはまっていて,ちょっと厭な思いをした)は,きっと「純粋=馬鹿」だとでも思っているんだろうか? かわたは新しい技術を身につける際に壁とならないよう,常に技術に関して素直でありつづけたいとは思っているが,けして,バカになろうとは思っていない.すくなからず得てきた経験と言うフィルターを通して見るようにしている.都会で異性間の遊びになれてしまった人間にとっては,女性経験がないことはよっぽどの人生経験不足に感じるらしく,格好のカモだとでも思っているのかもしれない.カモにするなら,都会にあこがれて,無意味に上京してくる若者だけにしてほしい.故郷がどこだかわかんないくらい地方を転々とし,現在,関東圏にたまたま住んでいて,そして暇つぶしに都心にでてくる人間は,おそらくカモにはならないだろう.だいたい,東京にあこがれたことは,かわたの人生で一度足りともない.楽しいところだとは思うけど.


7月×日(土)
 最終日,一通りの体験をして,最後に必要かどうか? 購入するかどうか聞かれた.当初の予定どおり,丁重にお断りしたのだった.結構,何事もなく解放してもらった.そういう意味では,マルチまがい商法の中でも少しは,ましなのかも知れない.が,あの製品が良いものとは思えない.TVの「あるある大辞典」での調査研究機関で効果が実証されたとも言っていたが,はっきり言って,馬鹿馬鹿しい.かわたの友人なんぞは大学時代,被験者数のあまりに少ない実験結果を指し,「あるある的」と酷評していたものだ.あのTV番組は,なぜ,あんなに少ないN(被験者数)で,さも効果が実証されたかのように言いきれるんだろうか? まじめに研究している人の苦労を知るといい! ホントに,TVとはいいかげんなものだ.それでいてものすごく多くの人に情報を伝えることができる.学会論文なんぞは目ではないくらいに.



後日談

 実は,サロンでの体験中,1回目,2回目までは,次があるのでかわたを紹介した例の知人は,必ず電話で「肌の調子はどう?」と聞いていたのだけど,3回目の後からはぷっつりと連絡が途切れた.体験の後,肌の手入れを担当した女性からは,「肌に何かあるといけないから,どんな調子か○○くん連絡しといてね」と彼に言っていたにも関わらず,彼はかわたへ電話することはなかったのだった.そりゃそうだ.金づるになり得ない人間をフォローする人がいるだろうか.あの街で出会う人間なんて,多くはそんなものである.お金に関するGive&Takeばかりだと悲しすぎるけど,やっぱりどんな付き合いでも,Give&Takeが成り立たなくなった時点で終了であるとかわたは思っている.できれば,精神的なGive&Takeで長続きできる仲間を得ていきたいものだ.

 それと,この機械,以前,とある課長さんの家で会った資材部の女性が言っていた機械とすごーく共通性があるんだよなぁ.まぁ,「自分で考えて自分で行動して決めた」ことだろうから,かわたが口を挟む問題ではないんだけど.

...かわたのつぶやき


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