Sorry,Japanese only
Last Update 20021124

潜入!テレアポ商法(^^;

 おわび

 今回の潜入は,かわたのタイムスケジューリングの甘さから,実際の展示場に潜入するに至らず,非常に中途半端なものとなってしまいました.かわたのスケジューリングでは,せいぜい2〜3時間でケリがつくだろうと踏んでいたのですが,実際は,その前段階で2時間を要しており,かわたの時間的都合上,途中で一方的にゲームオーバーにしたのです.では,中途半端ではありますが,潜入報告,お楽しみ下さい(?).



潜入日時 11月23日(土)PM3:00〜
潜入場所 高崎駅前 ビブレ横喫茶店
通算電話回数 3回+1回(現地で携帯より)


11月某日
 夜,11時過ぎ,ベッドの上でテレビを観ながら微睡んでいると,電話が鳴った.寮の電話というのは,慣れてくればその鳴り方で外線からなのか,内線からなのかがわかるものだ.そのときの鳴り方は外線の鳴り方だった.こんな時間に外線から電話が掛かってくるのは,十中八九,悪徳商法と決まっている.私は,しぶしぶ電話を取った.電話の向こうから,アニメ声の女が何かしゃべり出した.女は,自分を太田リカだと名乗った.私は,「あの〜? かわたですけど? どちら様ですか?」と尋ねる.井川遥がどうのこうの言っているので,最初,誰のことだかわからず「井川遥って?誰?」と尋ねた.「芸能人の・・・」と女は答えた.そこで私は,「あぁ」と納得したのだった.

 「間違い電話とかじゃないんで,切らないで下さいね?」と一言断ってから,彼女は「結婚に対する意識調査をしている」と言った.「どのくらいの年齢で,ご結婚したいですか?」と聞かれたので,「うーん,30前半かな?」と答えた.すると,「随分,遅いですね? 何故ですか?」と聞かれたので,「経済的に安定してからのほうがいい」と答えると,「随分,現実的な考え方ですね?」と言われた.
 このあたりから,私は,言葉のイントネーションを関西系(正確には讃岐弁?)に切りかえた.遊んでやろうと思ったからだ.すると,彼女のほうも,イントネーションを関西系にしてきた.何故,遊んでやろうと考えたかと言うと,彼女のバックの音から,明かにアポイントメント商法であることがわかったからだ.アポイントメント商法の特徴としては,まず,バックが騒々しかったり,他へ電話をしている音とかが聞こえてくるので,すぐわかるものである.
 「趣味とかあるの?」と聞かれたので,「仕事やな」と答えた.すると彼女は,「すっごいなぁ,仕事好きなんや」と心無い誉め言葉を口にした.「運動とかせえへんの?」と聞くので,「まぁ,冬になったら,スキーとかするかなぁ?」と答えた.すると,これもまた,適当に話を合わせて来る.キャバクラ姉ちゃんとの馬鹿トーク(何の実りも無い,無意味極まりない言葉遊び,基本的に,私のもっとも嫌うもの)で培った軽口で,適当なことを言ってみる.すると彼女は,「カモ」を見つけたとでも思ったのだろうか? 非常に上機嫌になっているのが電話越しからも伝わってきた.「技術者とかっていうのは,もっととっつきにくいと思ってたのに,なんやしゃべりやすいなぁ」とか言い始める.この反応は,安いキャバクラの姉ちゃんと変わらない.そりゃあ,とっつき易いだろう,何しろ計算づくというか,経験に基づく,馬鹿ネタデータベースから吟味して会話してるんだから.そして,出身がどこだの,何だのの会話の後,「せっかくだから,今度,高崎のほうに行くので,会わへん?」と彼女は言い出した.彼女的には,本題突入といったところである.私は,適当に難色を示しつつ,頭の中では,新たな潜入ネタになるな,と考え了承した.すると,彼女のほうが,「ウソつく人やないよね?」と確認してきたので,「どうだろ?」と適当なことを言うと,「待ちぼうけくらうのはいややで」と言った.そんなこんなで,今回の潜入が決定したのだった.

 その後,ネットで事前情報を仕入れる.井川遥と,アポイントメント商法ということで検索をかけると,ウェディングという社名が引っかかった.数百万円のダイヤとかを契約させる業者らしい.
 次の日にも,電話が掛かってきた.恐らく,確認だろう.
 そして,潜入前日の金曜日にも電話が掛かってきた.そのとき,時間をPM2:00〜じゃなくて,PM3:00〜にしてくれと頼まれる.


11月23日

 潜入日当日,PM1:00の電車に乗り,高崎駅に着いたのは,大体PM2:40だった.はっきり言って,東京に出るよりも時間がかかった.実は,群馬県民でありながら,高崎に行ったのは初めてだったのだ.何しろ,私の住んでいるところだと,高崎よりも大宮のほうがずっと近いため,遊びに行くなら,東京か大宮に行くからだ.
 私が今回,個人的にこの手の業者に確認したいと思っていたのは,まず,電話番号をどこで知るのか?ということ,そしてアポイントを取っているのは,バイトか? そして,彼女の会社の社名等であった.これについては,文中の後半で触れようと思う.

 PM3:00ぴったりに,例の太田リカが現れた.私は,前もってビブレ内部に隠れていたのだが,携帯電話で呼ばれてしまった.なお,彼女は,番号非通知設定で掛けてきた.この時点で怪しさ満点であった.私の計画では,最初,喫茶店等で,上記質問事項の確認をしようと思っていたのだが,都合のいいことに,彼女のほうから,少し時間があるから,喫茶店とかで話をしようということを言い出してきた.
 喫茶店に入ると,彼女はココアを,私はアメリカンコーヒーを頼む.最初は,思い出せないような,どうでもいい話をしていたのだが,途中から,「彼女云々の話」に変わる.話をしながら,私は彼女の襟に,ウェディングの社章がついていることを確認した.
 私が,
「彼女は,あんまりほしいとは思わないな」
というと,彼女は,「なんで?」と食らいついて来た.頭の中で,やった,食らい付いたと思った.
「だって,友達と違って,彼女にすると,義務が生じるでしょ?」
というと,彼女は怪訝そうな顔をした.恐らく,いままでテレアポにひっかかった奴で,こんな人間はいなかったのだろう.女の声に惹かれてホイホイついてくる男なんて,多かれ少なかれ,女好きで彼女がほしくて仕方ないのに,モテナイ男というのが相場だったのかもしれない.ちょっと私は,頭の悪い(笑)彼女のためにフォローした.
「まぁ,義務っていうと,随分,仰々しく聞こえるかも知れないけど,要は,友達よりも,彼女のほうが気も使わなきゃいけないし,責任を持たなきゃならなかったりするじゃない?」
ということを言うと,
「じゃあ,友達には,いいかげんな対応をするってこと?」と言い出した.

 この時点で,私は,逃げ出したくなった.なぜなら,こいつは手に負えない「ウマシカ(笑)」だと思ったからだ.友達にいいかげんな対応なんてするわけないだろう.私が言ったのはそんなことではない.つまり,人間関係の距離感っていう話をしたかったのだ.彼女はどうも,人付き合いをする上での距離感というものが理解できていないとしか思えないのだった.これは,この後の会話によってもはっきりするのであるが・・・.
 ちなみに,友達と,彼女とでは精神的つながりというか,精神的な距離感が異なっているってことは,きっと皆さんにもご理解頂けると思う(いや,そんなことはない!という人もいるとは思いますが・・・).私は,その話をしたのだ.
 その後,損得勘定の話をしてみる.結婚するメリットって何だろうな? やっぱ,メシが勝手に出てくるとか,部屋の掃除してもらえるとかか? と言ってみる(笑).彼女は,
「そんなの家政婦でいいやんか」
と言い出した.その通りである(笑).そして,
「あぁそうか,ただでヤレるな」
とも言ってみた.こんな質問をして,テレアポ女のレスポンスを見ているんだから,我ながら厭な奴だと思う.
 その後,私は,無意味に連絡を取り合ったりするベタベタした「仲良し」も嫌いだ,本当の友達なら,そんなにベタベタしてつるまなくても,ホントに困ったときや,ここぞというときは,力になってくれるものだという話をした.

 「人付き合いってのは,距離感を掴むってことだよ.」
 誰だって,「これ以上は,踏み込まれたくないって部分を持っているものだ」という話になったあたりで,彼女が,「頭,硬いなぁ.固定観念でガチガチなんやろ?」と言い出した.
 「何が?」
と尋ねてみた.このあたりから,私は時計を気にし出した.かれこれ,1時間以上経過していたからだ.彼女は,
「先入観で,人をみて,決め付けているでしょ?」
と言い出した.私は,心の中で爆笑した.そんな人間なら,まず,新宿とかで変わった仕事(?)をしている人と話なんかしないはずである.周囲の人に,自分の友達に「新宿で風俗関係のカメラマンをしている人がいる」と言ったら,きっと,彼らのほうが,すごい固定観念で彼を想像すると思う.先入観で人を見るなら,彼らのような仕事をしている人と友達になんかなれないはずだ.私は,基本的に,まずその人自身を見る.
「たくさんの人に会って,それらの人を分類整理,そして分析する」
と言ったところで,
「なんで,分類せなあかんの? なんで,分析するん?」
と彼女に言われた.

 その場では,答えなかったが(たぶん,答えても彼女は理解できなかっただろう),たくさんの人に会うと言うのは,それなりに危険も伴う.中には,ホントに危なそうな人もいるからだ.前もって,いろんな人と会った経験を分類して,自分なりに検討しておけば,何度も同じ危ない目(不用意な発言で,相手が激昂したりとか)に会う心配はなくなる.いわば,経験データベースに基づく,危険度予測をしているとも言える.しかし,基本的に予測するのに使うくらいで,その人自身がどうであるか?と言う判断は,このデータベースによって行うことは無い.それは,予測に基づく,距離感を保った会話によって判断する.
 データベースだの,予測だの,いかにも理系という感じの用語を使って,煙に巻いてきたが(笑),実は,こんなことは,誰でも無意識にやっていることで,平たく言えば,いろんな人と接することによって,人付き合いの距離感を知っているということだ.

 さて,距離感が掴めていない彼女は,ほんの1時間前にあった人間だと言うのに,どんどん,私の価値観というものに踏み込んできた.このウェディングという会社は,もっと社員教育をしっかりしたほうがいいんじゃないだろうか? カモ(というかお客様?)を怒らせたんじゃ,商談失敗である.ついさっき会った人間に,価値観を否定されて気持ちのいい人がいるはずがない.あまりに低能なので,面白いから,どんどん煽ってムカつかせてみることにした.あぁ性格悪いな・・・とも思ったのだが,時間を割いて話をしているのだ,このくらいのストレス解消(?)には付き合ってもらおう.なお,このとき使った発言は,私の経験上,これによって相手の女性が気分を害したという実績のあるものだ.「感情なんか馬鹿らしい,もっと冷静に物事を見ればいいんだよ」という発言である.心を揺さぶられる,そんな人間らしい感情を否定するなんて,この人は何て人間なんだ!? 信じられない.となるのが,普通の女性の反応である.ちょっと,誤解を招くのが嫌なので,フォローするが,私は,絵を描くこともあるし,芸術鑑賞は好きだし,綺麗な景色も大好きだ.感動できる映画やドキュメンタリーも好きだ.テレビや映画を観ながら,一人で泣いていることもある(笑).感情が馬鹿らしいと言うのは,感情を持ちこまなくても判断できるところに感情を持ち込むのが馬鹿らしいという意味で言ったことだ.私は,説明が下手なので,以前というか,今でも(?)こういう失言をして,相手を不機嫌にしたことがあるというだけである.
 案の定.単純に彼女は,機嫌が悪くなった.「最近,ここを使ったことはあるの?」と彼女は,胸を叩いて見せた.「ここって?」私は,すっとぼけてみる.彼女は「心」だと言う.

 どうやら,彼女の人付き合いのコツは,一発直感,インスピレーションだと言うことみたいだ.まぁ,いいや,俺に害がなければ,カンピュータでもなんでも使ってくれ,私は,心の中でそう思った.でも,テレアポみたいな仕事をしている人こそ,人を分析して対人交渉のストラテジーを練っていたほうがいいと思うんだよな,と老婆心を持ってしまうのだった.
 「心は,胸にあるんじゃなくて,ここだよ」
と私は,頭をコツコツ叩いて見せる.ある意味,皮肉である.
「心なんかで,動くのは,馬鹿らしいし,人に心を見透かされるようじゃ,甘いよね?」
と更に,相手をムカつかせてみる.さらに,
「俺は,知人に,君の心は機械みたいだ,言ってることは正論かも知れないけど,なんか,思考が機械みたいって言われたことがある,機械的に人を分析できるのが理想だよ」
とも言ってみた.さぁ,どうだ.トドメの一言である.インスピレーション・カンピュータ人間に,こんなこと言って,さらに,人づきあいの距離感もわかっていない人だと,「変わった考えだねぇ,あはは」と笑って済ませるなんてできないだろう.案の定,彼女は,
「もろ大卒やなぁ,ガチガチやん」
とか言い出した.心の中で,
「大卒やなくて,院卒です」
と私はつぶやいた(笑).

 ちなみに,寮の電話番号は,電話帳に載っているとのこと.また,電話帳か,名簿業者から買った資料を元に,電話を掛けているんだそうだ.これは,マスコミとかが言っている情報とそんなにかわりはない.また,ウェディングには,テレアポのみのバイトはいないそうで,基本的に販売員(社員?)が空いた時間に電話を掛けているとのこと.最近では,関西以外で,東京のほうでもTVCMが流れるようになったんだ〜,CMの音楽も自分達が選んだの〜,ということを目をうるうるさせて言っていました(笑).それと,ウェディングは,京都に本社のある会社です.

 時計を見ると,なんと,5時だった.私は実はその日,キャバクラ姉ちゃん同伴ノルマ達成ヘルプをしに,新宿に行かなきゃならなかったのだ(笑).
「あっ,俺,今日7時から友達と約束があるんだよ」
と言うと,突然彼女の態度が一変した.
「なんで? 今日は,私との約束があるから他の約束入れないでって言ったでしょ?」
と,あからさまに不機嫌な態度をとるが,若干の焦りの色も見え隠れしている.
「いや,昨日連絡が入って,そんな遅くまでかかると思っていなかったから」
と,私が答えると,
「なんや,自分の言うことは,正論やとか言うて,私の言うてることと,あんたのやってることのどっちが正論なん?」
とか言い出した.私は,心の中で,「俺は自分で,正論吐いてるなんて言ってないぞ〜! そう言ったのは,あくまで知人だ.俺の意見が正論なんてとんでもない,っていうか,こいつ,人の話聞けよ! むかつく!」と思ったのだった.

 仕方ないので,
「今日初めて会ったような人間と,友達となら,絶対友達のほうを選ぶ」
と言って,ココア&コーヒー代として,千円を投げつけた.
「俺は,帰る」
と言って,席を立つと,
「まぁ,座ってよ」
と彼女は言い出した.

 カモを逃すと思って,気が動転しているのかと思いきや,すかさず反撃の一言.
「あんた,そんなことやってたら,信用なくすで?」
「大学でなんの勉強をしてきたん?」
 彼女は,そんなことを言い出した.
「工学やな」
 すかさず私がそう答えてやると,
「へぇ〜,可哀想やなぁ?」
だとさ.

 信用ってねぇ,そりゃ,あんたの会社が社会的信用を得てから言ったほうがいいですよ? と思いつつ,私は苦笑いを浮かべた.いくらなんでも,まともな人と会って話をする約束なら,こんなことはしない.今回は,人と約束さえ作っておけば,いざとなったら他に約束があると言って,逃げ帰ることもできると思ったから,約束を入れたと言ってもいい.それに,缶詰にされて逃げられなくなったとしたら,約束をしたキャバ嬢から私に電話が掛かってくるだろうから,彼女に助けを求めることもできる(警察に電話してくれとかね.警察が動くとも思えないけど・・・).そこまで,計算していた.
 でもまあ,彼女自身,私が下調べをしてきているなんて知らないだろうから,可哀想な限りである.そう,彼女は私に「可哀想」だと言ったが,私に言わせれば,暇な男に話のネタにされて「あなたこそ可哀想やな」といったところである.
 押し問答をしていると,彼女は,7時からの約束をどうにかしろと言い出した.はっきり言って無茶苦茶であろう.知り合って2時間しか経っていない人間に,なんの権限があってそんなこと言っているのだろう? だいたい,彼女は,当日○時間くらい時間を空けておいてくれませんか?とは言わなかったではないか? 私が会社に入って経験したイメージでは,事前に時間を指定しなかった場合,話をする時間は,長引いたとしてもせいぜい2時間程度であろう.場合によっては,30分くらいで,「ちょっと用事がありますので」と席を立たれてしまうことだってあるだろう.それに,彼女から見れば,私はお客様である.自分が上位に立とうとしてどうするのだろうか?「そうなんですか? それは残念ですね.それでは,次回またお時間を作ってお会いして頂けないでしょうか?」とか言うのが,普通の社会人が営業に出て言う言葉であろう.先方のお客様に,急用が入って,そっちのプライオリティが高いから,自分の約束を若干変更されたところで,「怒った」んじゃ,ビジネス失敗である.
 アポイントメント商法やっている会社に,社員教育に問題ありだと言ってもどうしようもないが,あれじゃ,だめですよ? と言いたいところだ.

 「とにかく,どうにもならない!」
と言って,問答無用で,伝票を持って席を立つと,彼女もしぶしぶ席を立った.不平不満を言っている彼女に対し,レジの前で,私は一言,
「俺は,アホやないだけや」
と言った.この一言の意味を彼女は理解しただろうか? 私が,事前調査済みで,彼女に会い,もともとからかうつもりしかなかったということに.そして,彼女は,私の投げつけた千円で会計をし「あっ,間違ってそっちで払ってしもうた」と,わざとらしいことを言ったのだった.
 喫茶店の階段を降りると,彼女はココアのお礼も言わずに,「友達無くさんように気をつけてな」という捨て台詞を残して去っていった.

 外は,コートの隙間から入り込む風が冷たく,冬が近いことを感じさせる夕闇だった.私は,ノルマが達成できなかったら,彼女も大変なのかな?と思った.もしかしたら,テレアポの彼女も,新宿のキャバクラ嬢と同じ悩みを抱えていたのかも知れない.女心と秋の空,もうすっかり冬空.遠くに目を投げると,クリスマスの装飾が飛びこんできた.

...かわたのつぶやき


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