このとき,反射係数ρを特性インピーダンスZo,および負荷インピーダンスZLで表現すると次式となります.
さて,実際にこの反射係数を測定するにはどうすれば良いのでしょうか? 答えは入射波電圧eiと,反射波電圧erを測定して次式のとおりに計算すると良いのです.
ここで注意するのは,eiとerはスカラー量ではなく,ベクトル量であるということです.つまり,ei,erはそれぞれ「波」を表しているということになります.
それじゃ,やっぱりどうやって測定するんだ? と思うことでしょう.実際の測定にはネットワークアナライザという測定器が使われます.ネットワークアナライザの内部には方向性結合器という素子が入っており,これにより入射波,反射波のみを検出し信号処理(ダウンコンバート→ディジタイズ→演算etc...)を加えることで反射係数を求めています.ここで測定した値はSパラメータという言葉で表現され,S11とかS22と呼ばれることもあります.本質的には同じことを言っているのだと考えてもらっていいと思います.
ところで,ネットワークアナライザで測定したデータでは,反射係数はΓとθで表現されていることが良くあります.このときのΓは次式で示されます.
また,ときにはリターンロスとして[dB]単位で表現されていることもあります.これは次式から計算されます.
さて,設計をしていると,Γとθといった量ではなく,Z=R+jXでその値を知りたいと思うこともあると思います.
例えば,パルス回路の終段にたまたま,高周波MOS-FETを採用しようと考えたとします.MOS-FETのゲートをドライブするにはそれなりの容量(キャパシタ)をドライブできる回路が必要なので,このデバイスのゲート容量はどのくらいかな?と思いメーカのデータシートを見てみたら,なんとS11と言う聞きなれないパラメータしか書かれていなかったのです.何やらΓ(mag.)とかθ(ang.)しか書かれていません.
でも,実はあせらなくても,反射係数ρの定義にしたがって式を変形させれば,このΓとθをインピーダンスの形に変形できるのです.ここで,このΓ(mag.)とθ(ang.)からZ=R+jXの変換式を導いてみることにします.
オイラーの式より
ここでZを規格化インピーダンス(実際のインピーダンスを特性インピーダンスZoで正規化したインピーダンスのこと)で考えると
よって
となります.
実際の値に戻すには,それぞれZo(50Ω)を乗算すればいいことになります.