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Last Update 20051123
回路屋さんの虎の巻(?)
世の中には,たくさんの悪書と良書が入り乱れています.本を選ぶときは,目先の流行や華やかさにとらわれず,古くから受け継がれてきた(歴史に埋もれていない)文献を探すべきであると言ったのは,ドイツの哲学者ショウペンハウエルですが,こと技術書に関しては,古臭すぎる本もどうかと思います.
しかし,技術書でも,どういうわけだか絶版となってしまったような本の中にすばらしいものが散見されるという点は否めません.
ここでは,かわたの本棚の中から,いくつかピックアップして紹介したいと思います.基本的に,かわたのおつむがついていける範囲内で「いいなぁ」と思った本です.なかには少し程度の高いものもあるかもしれませんが,新人エンジニアが取っ掛かりとして読んでおくと良いのでは? と思った本を中心に集めてみました.
- 計測器関係
- 我孫子健一著:わかる電子計測技術,CQ出版
- OPアンプ回路関係
- 岡村廸夫著:定本OPアンプ回路の設計,CQ出版
- 馬場清太郎著:トランジスタ技術SPECIAL OPアンプによる実用回路設計,CQ出版
- Ron Mancini, ed:Op Amps for Everyone,Newnes
- ディスクリート回路関係
- 永田穣監訳:超LSIのためのアナログ集積回路設計技術(上/下),培風館
- 飯塚哲哉/浅田邦博共訳:アナログ・ディジタル混載システムLSI 低電圧・低消費電力回路技術,培風館
- フィルタ回路関係
- Rolf Schaumann, Mac E. Valkenburg:Design of analog filters,Oxford University Press
- 遠坂俊昭:計測のためのフィルタ回路設計,CQ出版
- 森 栄二:LCフィルタの設計&製作,CQ出版
- 実装・ノイズ対策関係
- 吉田 武著:改訂 高周波回路設計ノウハウ,CQ出版
- 岡村廸夫著:解析ノイズ・メカニズム,CQ出版
- 黒田忠広監訳:LSI技術者のための親切な電磁気学,丸善
- ECLロジック回路関係
- ロジック・ファミリ ユーザーズ・ガイド,ON Semiconductor
- トランジスタ技術SPECIAL No.22 ディジタル回路ノイズ対策技術のすべて,CQ出版
- その他・アナログ回路屋さんに必要な(?)雑多な知識を得る本
- 長谷川 弘著:アナ/デジ混在回路設計の勘どころ,日刊工業新聞社
我孫子健一著:わかる電子計測技術,CQ出版
きちんと測るって言うのは,案外難しいものです.ときには,統計学の知識が必要となったりもします.測るということについて,基礎から勉強したいけど「学校の教科書」じゃ眠くなるって人にお勧めの本です.
岡村廸夫著:定本OPアンプ回路の設計,CQ出版
なんかいいOPアンプの本はないですか? と周りの電子回路エンジニアに聞いてみると,ほとんどの人がこの本を紹介することでしょう.かわたは,高専生だった18歳のころ,なかなか授業でOPアンプを扱わないことに不満を感じ,この本で独学したものです.おかげさまで,「自動制御」の授業でも,ボーデ線図を使った位相補償のやり方だけはよく理解できました.OPアンプを位相補償の考え方も含めて勉強したい人には,この本しかないと言えるでしょう.
馬場清太郎著:トランジスタ技術SPECIAL OPアンプによる実用回路設計,CQ出版
実際の回路設計の現場では,数式を使い,量産時の部品ばらつきなどを考えながら設計していきます.ところが,数式を使った実用的な設計方法について書かれた本はあまりありません.そんな中,この本は実用的な設計手法についてとてもわかりやすく学ぶことができる良書と言えるでしょう.回路設計時に手元に置いておきたい本です.
Ron Mancini, ed:Op Amps for Everyone,Newnes
OPアンプ回路について,基礎的なところから,一通りの勉強をすることができます.この本で基礎を勉強した後に,上記の馬場氏の本を読めば,理解がより深まるでしょう.ただ・・・Ron Manciniの英文は,ちと読みにくいです.
永田穣監訳:超LSIのためのアナログ集積回路設計技術(上/下),培風館
入社1年目のとき,この本を職場の机の上に置いておいたことがきっかけで,課内で開発中の製品に載るコア回路の一つ:パルサー回路(高速パルス発生回路;ディスクリート構成)を設計してみないか? と言われたことは今でもよく覚えています.この本は,バイポーラ・トランジスタ回路設計をしっかり勉強したい人には非常に役立つと思います.実は,もうすこし簡単な本もあるのですが,どうせ買うなら良書を選びたいものですね.人によっては,原書を薦めるかもしれません.邦訳版は原書第2版の訳であり,最新版ではないことと,一部に誤訳があるそうです.
飯塚哲哉/浅田邦博共訳:アナログ・ディジタル混載システムLSI 低電圧・低消費電力回路技術,培風館
C-MOS回路設計,特にシステムLSI設計を志す人には,ためになると思います.一般の電子回路エンジニアでも,一読の価値ありです.いろいろな応用回路が載っていて,それぞれの回路のアイデアがエンジニアにとって非常に刺激になる本です.難点は「高額」というところでしょうか? 1万円弱する本です.
Rolf Schaumann, Mac E. Valkenburg:Design of analog filters,Oxford University Press
OPアンプを使ったアクティブ・フィルタ回路について,一通りのしっかりした知識を得たいときにお勧めできる本です.邦訳があれば良いのですが・・・現在はないようです.ただ,それほど読みにくい英文ではありませんので,必要な箇所をかいつまんで読む分には苦にならないと思います.
遠坂俊昭:計測のためのフィルタ回路設計,CQ出版
とりあえず,安直でも良いのでOPアンプを使ったアクティブ・フィルタを作る必要がある人にお勧めします.正規化表が載っていますので,簡単なフィルタ回路なら本に書かれている数式を使って設計することができるでしょう.とりあえず,手元に置いておくと便利です.
森 栄二:LCフィルタの設計&製作,CQ出版
安直にLCフィルタ回路が設計したい人にお勧めです.こちらも正規化表が豊富ですので,とりあえずLCフィルタを設計する必要がある人には便利です.ただし,表にない条件のフィルタ回路が必要な場合には使えません.
吉田 武著:改訂 高周波回路設計ノウハウ,CQ出版
現在では,「高周波回路」といえば,GHz帯の周波数を扱う回路をさすような気がします.MMICを駆使したりする世界ですね.ところが,この本は数百MHzの信号の扱い方が書かれた本です.でも,GHz帯の信号や,高速パルスを扱うときにおいても,「高周波信号」を扱う基本は変わらないので,高周波の世界に入る前に一度目を通しておくといいと思います.
岡村廸夫著:解析ノイズ・メカニズム,CQ出版
ちょっと古い本ですが,かわたは高専生だった18歳のころにこの本を読みました.そしてGNDライン(アース)の取り扱いが大切だということを知ったものです.普段気をつけているつもりでも,「あれっ?」と思ったときや誘導ノイズに困ったときは紐解きたい本です.
黒田忠広監訳:LSI技術者のための親切な電磁気学,丸善
電磁気学に関する知識が,実際の技術者の視点から説明されている本です.当初,洋書のほうを読んでいたのですが・・・訳書が出たので買ってしまいました.日本語訳も読みやすい文章ですので,こちらの邦訳の方をお勧めしておきます.高周波/高速回路設計を担当することになった方や,EMC技術者など,電磁気学を復習しなければならないのだけど・・・あの学校の教科書だけは読みたくない・・・という方にお勧めです.電車の中などでも気軽に読めるでしょう.
ロジック・ファミリ ユーザーズ・ガイド,ON Semiconductor
ECLロジック回路の設計をする人は,ぜひ一読しておくべきでしょう.かわたは,後輩に終端抵抗の決め方をきかれたとき,この本を紹介するようにしています.ON Semiconductor社の代理店か,ON Semiconductor社のWebサイトから頼めばタダでもらえます.
トランジスタ技術SPECIAL No.22 ディジタル回路ノイズ対策技術のすべて,CQ出版
ECLロジックデバイスとは何ぞや? といった初心者にはこの本のECLの記述が役立ちます.伝送線路の反射についても書かれていて,おあつらえ向きです.かわたの職場では,この本を持っている同期連中が結構います.
長谷川 弘著:アナ/デジ混在回路設計の勘どころ,日刊工業新聞社
アナログ回路屋さんといえども,ディジタル回路が周りに全然ないといった回路を設計する人はまれでしょう.この本は,回路実装技術から,A/D変換とかに関する記述まであり,新人に手始めに読ませたい本だなぁと,かわたは思っています.

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